にんじんは、もう二度と食事のさい、葡萄酒を飲まないだろう。
かれはここ二、三日のうちに、葡萄酒を飲む習慣を、家族のものや家にくる連中をびっくりさせてしまうほど、あっさりと、なくしてしまったのである。
最初かれはこういった。ある朝、ルピック夫人が、いつものように、かれに葡萄酒をつごうとしたときのことだ。
――お母さん、いらないよ。喉がかわいていないもの。
夕飯のときも、かれは、またいった。
――お母さん、いらないよ。喉がかわいていないもの。
――おまえも経済的になったね。と、ルピック夫人はいう。みんなも喜ぶよ。
こうして、かれは、その初日の朝から晩まで、葡萄酒を飲まなかった。気温もおだやかだったし、それに、ただ、喉がかわかなかったからである。
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