05 失礼ながら 

 こんなことをお話ししてもいいだろうか? お話しすべきだろうか? よその子どもたちは、心もからだも白くなり、洗礼をうける年になっているのに、にんじんだけは、相も変わらずうす汚かった。ある晩は、どうにも訴えることができず、がまんしすぎたのだ。

 かれは目盛りを刻むように、少しずつからだをねじまげ、あの不快さを静めようとしたのである。

 なんと不当な考えだろう!

 また別の晩には、うまいぐあいに、街角の車よけの石から、ほどよく離れたところにいる夢をみた。それで、かれはまったく無心のうちに、ぐっすり眠ったまま、シーツのなかにしてしまったのである。かれは、はっと目をさます。

 驚いたことには、自分のそばには、石などありはしない!

 ルピック夫人は、どなりつけたい気持ちをおさえている。彼女は後始末をしてやっている。黙って寛大に、母親らしく。それなのに、翌朝のにんじんは、だだっ子のように、床も離れずに朝飯をたべる。

 そう、かれはベッドにスープをもってきてもらうのだ。それは念入りのスープで、ルピック夫人が木のへらで、少しばかりあれを! ほんとに少しばかりだが、溶けこましたものである。

 枕もとでは、なにくわぬ顔をした兄のフェリックスと姉のエルネスチーヌとが、ひとたび合図があるならば、ただちに大笑いしてやろうと待ちかまえながら、にんじんを見守っている。ルピック夫人は、小さじにスープをすくっては、息子に一口ずつ飲ましてやっている。彼女は、そっとわきを盗み見しながら、兄のフェリックスと姉のエルネスチーヌに、こういっているようだ。

――さあ、準備はいいかい!

――うん、いいよ。

 かれらは、まだことが始まらないのに、早くも、やがて拝見できるしかめっ面を楽しんでいる。できることなら、隣人達を何人か招いておいたかもしれない。かれこれするうちに、ルピック夫人は、最後の目くばせを、上の子どもたちに送る。こう尋ねでもしているかのように。

――さあ、用意はいいね?

 彼女は、ゆっくりと、最後の一さじを取り上げ、にんじんの大きく開いた口のなかへ、喉もとにふれんばかりにつっこむ。おしこみ、むりにも飲ませる。そして嘲笑的に、また、いかにも不快そうに、にんじんに向かっていう。

 ――ああ! 汚らしい、おまえは食べたんだよ、ほんとに食べたんだよ。それも自分のやつをね。昨夜のやつをさ。

――そんなことだと思っていたよ。

 にんじんは、ぽつんと答える。みんなが期待していたような顔を、少しも見せもしないで。

 こんなことには、慣れきっているのだ。ものごとは慣れてしまうと、ついにはもう、滑稽なことでもなんでもなくなってしまう。