こちらは漫画のレビューとなっております。
レビュー全般に言えることではありますが、
かなり個人の趣味が反映されておりますので
野暮な事は言いっこなしです。(デスク〉




「怨歌劇場」(戦争・戦後物)

「おおきく振りかぶって」(高校野球もの)

「怪奇版画男」(版画ギャグ)

「吉祥天女」(サスペンス)

「GS美神(ゴーストスイーパーみかみ)極楽大作戦!!」(コメディ)


「西原理恵子の人生一年生」(雑誌)

「西原理恵子の人生一年生 2号」(雑誌)

「JESUS(ジーザス)」(アクション)


「大葬儀」(エログロナンセンス)

「必殺山本るりこ」(ギャグ)

「ひとりで生きるモン!」(ギャグ)

「バスルーム寓話」(ファンタジー?)

「マウス・マウスII 〜アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語」(ノンフィクション)

「ヨリが跳ぶ」(スポーツ)

「ラクダが笑う」(エロバイオレンスアクション



怨歌劇場

原作:野坂昭如
作画:滝田ゆう
ぱる出版 PAL Comics ¥1,800


上のタイトル一覧に結構悩んで戦争・戦後物と書きました。的を射ていないような感じもしますが、これに収められている中・短編の12編すべてが戦争がらみのものです。
原作の 野坂昭如は、『火垂るの墓』の原作者として有名ですね。
滝田ゆうは『寺島町奇譚』が有名です。講談社ノベルスのパイプくわえた犬のイラスト、と言った方が通りが良いでしょうか。

野坂昭如の原作と読み比べてみるのも一興ですが、原作を知らずとも十二分に楽しめます。
もう、これは滝田ゆうの世界なのです。

(文責:デスク 03.3.16)


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おおきく振りかぶって (1)

ひぐちアサ
講談社 ¥540


(係長)

 中高一貫校で野球部にいた主人公は祖父が理事長をしている、という理由でひいきされ投手を務めるがチームは負けてばかり。
 それでも中学3年間決してマウンドを譲らなかった。
 高校進学を機に他県へ越境入学し野球部に入るが小心者のうえ泣き虫、人に何か言われると悪いほうにとってしまううえに自分の思っていることもはっきり言えないウザイ男。
 しかも硬式野球部はできたばかりでメンバーはたった10人、1年生のみ。

 1巻ではこんな情けない主人公がチームに溶け込めるのか、主人公はうじうじ、周囲はイライラしたり呆れたりしながら話が進む。
 他のキャラも特徴がはっきりしていてわかりやすく、楽しい。
 絵が、話の進み方がと思う点もあるが読み返しても面白い。
 野球のことが全くわからなくても、5回読んでも飽きない。
 次の巻が楽しみな漫画。




(デスク)

 3巻の帯に『こんな高校野球漫画読んだことない!』とあるが、全くもってその通り。
 これはストーリーこそ高校野球漫画だが、セリフ回しが…なんというかアレだ、『恋愛漫画』だ。男どうしの会話とは思えん。
 恋愛漫画のセリフ回しと野球に関する詳細な説明。正直、1巻を読んだ第一印象は良くなかった。混乱して。
 その答えが次巻以降にあるのでは? と思い2・3巻を購入。混乱は…治まらなかった。

 絵に関しては…もっとスピードを感じさせてほしいと思う。特に集中線と描き文字がへたくそだ。あとコマの中にある不要と思える程の細かいセリフや擬音『ムカッ』『ヌギッ』とかも筆者の画力に対する不安感から来ていると思う。漫画は絵がへたくそでもストーリーやセリフ回しで読ませる事ができるとはいえ(その逆は難しいけど)、絵だけで伝わるならそれにこした事はないのだから。しかしそれでも1巻から比べると3巻はずいぶんと上手になってはきた。
 ピッチャーの三橋にはちっとも共感できない。彼は『野球が好き』なのではなく『ピッチャーが好き』としか思えない言動をする。物凄くピッチャーというポジションにこだわりを見せる(中学時代に経営者の孫という事からヒイキされ、かつチームメイトから総スカンをくらいながらもマウンドを降りない)かと思えば「オレのせいで阿部くんも負ける」だの「(甲子園に行ける、とのセリフに対して)ムリです…」だの…。
 自分のプレイにプライドを持っている人間がポジションにこだわりを見せるなら納得できるんだけど、この自信のなさっぷりでどうしてそこまで…。
 じゃあお前は何が楽しくて野球やってるんだ?!と。もう、ここだけはこれからのストーリーの中で私を納得させて欲しい。

 ここまでくさしても4巻を私は買うだろう。なんというか…妙に続きが気になるのだ。
 お願いだからこの混乱をすっきりさせて! 納得させて! そこに期待して続きを読んでいこうと思う。


(委員長)

 わたしは運動音痴だ。
 だけどひとなみにスポーツは好きで、子どもの頃、本当はバレー部にはいりたかった。保護者は剣道部をすすめた。だけどどちらも、部費ってものがあると知ったとたん保護者が猛反発し(ようするに貧乏だった)、どちらにもはいれなかった。

 でも、はいれなくてよかったのだろう。
 なにしろ小さい頃から、縄跳びすらろくにできない運動音痴だったから。
 部活にはいって、そこで運動音痴だったら、どれほどの苦労や惨めさが待ちかまえていただろうか。体育の授業ですら胃の痛くなる思いを隠して必死で泣くのをこらえていたのに。ましてや、好きなのに上手にできないことの悲しさ、自分への不甲斐なさや無力感、ときとして、他人から無価値と見なされていると感じるほどの、いたたまれなさ。
 大げさだと思われるだろうけど、体育の授業でバレーボールをするたびに、わたしはそんな思いをしていた。
 だけど、そこで泣くのもまた情けないとわかっていたから、
 「どうせ下手っぴだから」「ごめんね、足手まといで」「なるべく邪魔にならないように、ボールには手を出さないね」
 へらへらと笑っているすべは身につけた。

 ひとが、なにかを好きでいるのは、それが上手にできるからとは限らない。うまくできるから好きになることも多かろうが、下手の横好きという言葉があるとおり、へたくそでも、好きなものはある。
 そして、それが勝負の世界なら、好きだけではやってはいけない。下手くそならば去れと追われるか、自ら悟って退くかが当たり前のパターンだろう。

 主人公である三橋の悲劇は、学園の理事長の孫で、球が遅いにもかかわらず三年間、監督のひいきでピッチャーをやったことだろう。ひいきがなければ、三橋の努力のたまもの―――九分割のコントロールは、もっと早い時期に正当に評価されたかもしれない。
 ある意味でこれは、シンデレラストーリーだ。
 灰被り姫が王子様に出会い、本当のお姫様になる。三橋は新しいチームで出会った捕手の阿部に見いだされ、本当のエースへの道を進みはじめる。
 まるで恋愛のように、たがいを認める相手に出会い、そして成長していく姿がキラキラしているのは当然だ。それだけなら、まぶしすぎて、わたしくらいの年になったら照れて読めたものではないかもしれない。ありえないほど輝いていながら、やけに生々しい感じがするのは、三橋の卑屈さと、投げることへの強烈な執着のためかもしれない。

 中学の三年間、チームメイトにダメピーとののしられながらもマウンドをゆずらなかった。ピッチャーやれないなら野球部にはいる意味がないとまで思い切る頑なさ。好きでたまらないのに、自信を持てない卑屈さ。

 白状すると、最初は、そんなことってあるかい、と思っていた。自信がなくて、まわりからも責められて、ただ投げるのが好きというだけで三年間も耐えられるものかと。
 4巻以降で、三橋の投げることへの因果話かなにかが披露されて、なるほどそれなら三橋の執着っぷりもうなずける、と納得させてもらえるだろうと期待していた。

 だけど、本誌アフタヌーンも買いだしたいまは違う。
 こいつ、バカなんだ。バカが百個つくほど投げるのが好きなんだ。
 リアリティの種のひとつはここにあると思う。
 「ああ、それならしかたないね」
 と納得できることなど、現実にはほとんどない。たとえば、実はピッチャーをやることは早くに死んだお父さんの夢だった(注:三橋のお父さんは死んでません)、なんて設定になったとたんに、それはウエルメイドの作り話になってしまう。読んでいてイライラするほどのうじうじっぷり―――周囲のやつらと一緒に読者もイライラしてるなら、それはもう三橋が生きて存在してるからじゃないのか?
 三橋だけでなく、ほかの球児たちの成長ぶりを、いつまでも見守っていきたい漫画だ。
 「下手でも頑張っていいんだ」
 この台詞はまだコミックス4巻に収録されている、加具山の言葉だが、運動部の経験があって、そして下手じゃない人なら、「でもそんな奴、チームにとっては迷惑だよ」と眉をひそめるかもしれない。
 だけど、好きだということさえ恥ずかしくて言えなかったあの頃のわたしのためにも、やっぱり、努力し続けるこいつらを応援したい。
 好きなことを、好きだからというだけで頑張る姿を。


(文責:係長、デスク、委員長 05.08.07)


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怪奇版画男

唐沢なをき
小学館 ¥1,050


版画漫画。本当に、効果でプリントゴッコ等を使った部分以外は全て手彫りの版画だそうです。 初出一覧も版画。奥付も版画。帯も版画。 普通マンガは時間がなくなってくると白っぽい紙面になってくるものですが、これに限っては逆です。なんか黒っぽくなってきます。版画だから。主人公は棟方志功風。版画だから。ギャグはいつもの唐沢節。版画だから(?)。とにかく「よく彫ったなあ」としか言えません。オツカレ様です。

唐沢なをきオフィシャルサイト「からまん」


(文責:デスク 03.7.10)


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吉祥天女

吉田秋生
小学館文庫 全2巻


高校二年生の由似子のクラスに転入してきた、ミステリアスな雰囲気を持つ叶小夜子。小夜子を取り巻く複雑な人間関係と次々に起こる事件。女の業や男の権力欲がからみあい、もつれたその先にあるものは……?

登場人物のセリフが胸に刺さります。
「おまえや大沢を見てるとつくづく女に生まれなくて良かったと思うね」
「本来『こうあるべきだ』と思い込んでる相手から反撃されるとそんなに腹の立つもんかね?」
「もとから男に生まれついてンだからそれで十分じゃないか
それ以上『らしく』する必要なんかあるのかい?」 (涼)
「男たちがどんな目で自分を見てるか 何度妄想の中で私を犯したか…
憎んではいないけど尊敬もしていないことはたしかね…」
「女であるということが時どき どれほどの屈辱をもたらすか…あなたたち男にはわからないでしょう」(小夜子)

ウーマンリブがどうこう、というストーリーではありません。なぜなら小夜子が男たちに対峙していくための武器のひとつは『女であるという事』なのですから。『女』『子ども』という弱者の立場を上手く利用し、相手を破滅に追い込んでゆく小夜子の手際は鬼気迫るものがあります。その罠にはまってゆくのは「女にコケにされるのが我慢ならない」男や「小娘だと思って甘く見ている」女たちです。しかし、彼女の冷たい手腕はそうせざるを得ない、そうしないと踏みにじられるしかないという過酷な状況が生み出したものです。彼女は善良な家族に囲まれて平凡に育って来た由似子や、自分と似た環境に育ってきてはいるものの、全く違う道を選んだ涼には羨望ともいえる眼差しを向けます。その笑顔のなんと痛々しいことか。

平凡に生きるという事は思っている以上に幸福な事なのだと改めて思います。

(文責:デスク 03.8.15)


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GS美神(ゴーストスイーパーみかみ)極楽大作戦!!

椎名高志
小学館 少年サンデーコミックス 全39巻


「地価高騰により地縛霊の掃除は超ボロい商売となった。もはやこの日本に幽霊を住まわせる土地などないのだ!」

美人ゴーストスイーパーの美神令子、アシスタントで煩悩いっぱいの横島忠夫、巫女姿の幽霊おキヌちゃんの3人で繰り広げるドタバタコメディ(死語?)。
週間少年サンデーという超メジャー少年誌に連載されていた割に、主人公が金に目のないわがままボディコンおねーさんという設定が、全く読者の共感を得なそうですが私は大好きです。
笑かし路線ですがおキヌちゃんが幽霊になるに至った経緯、また後半のアシュタロスの当たりでは涙してしまいます。
絵は多少好みが分かれそうです。

椎名高志オフィシャルサイト

(文責:デスク)


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西原理恵子の人生一年生

西原理恵子
小学館 \1,000+税


なにもかもが西原理恵子づくしの本。7大ふろくもついてます。そのほかにも覆面座談会や青木雄二氏(ナニワ金融堂の作者)との対談など盛り沢山!!

なのですが。
これだけ企画が盛り沢山なのに肝心の書き下ろしマンガが泣けてくるほどしかありません。
やはり西原理恵子の名前で本を買う人達は、彼女のマンガやコメントを楽しみにしていると思うのですが。
途中にはさまっているふろくもどうかと。頭の方にもってきてくれればまだしも、中盤に挟まれると本が開きにくくて読みづらい事このうえなし。

青木氏との対談は面白かったです。

西原理恵子公式サイト 「鳥頭の城」

(文責:デスク 03.4.30)


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西原理恵子の人生一年生 2号

西原理恵子
小学館 \1,300+税


なにもかもが西原理恵子づくしの本第2号。

上では結構くさしてますが、2号は良かったです。
なにが良いかって、前回の一番のマイナスポイントだったふろくがなくなったこと。
いや、ついてないわけじゃないんですが、前回ほど過剰ではないんですね。おかげですごくページを開きやすい。
書き下ろしマンガも、他のマンガ家さんのマンガも増えて大層読みごたえがあります。ページ数も前回より140ページほど増えてますし。
しりあがり寿さんとの画力対決には声出して笑ってしまいました。
今回はまんべんなく面白かったです。倉田真由美のマンガ以外は。

西原理恵子公式サイト 「鳥頭の城」

(文責:デスク 03.4.30)


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JESUS(ジーザス)

原作:七月鏡一
作画:藤原芳秀
小学館 少年サンデーコミックス 全13巻


血と炎にまみれた死神、ジーザス!本名も過去も誰も知らないその殺し屋がカムフラージュのために入れ代わった人間はなんと高校教師!えらい苦労して教師をやっているのに次々に起こるトラブル!
とにかくアツいネームを堪能いただきたい漫画です。

「そう、俺の名はジーザス。地獄に堕ちても忘れるな」
「ケモノはケモノによって目覚めるものだ」
「お前たちは俺の影だ!どこまで続くか分からぬ広大な血の海を渡ろうとあがく、ちっぽけなケモノだ!それもいい!俺はどこまでも泳ぎ続けてやる!!いま目の前にいるお前たちを殺戮し!あるかなきかも知れぬ岸辺めざして!」
「私を“虎”と呼ぶな」

うおおおおおおおおおおおおっ!!

七月鏡一オフィシャルサイト

(文責:デスク)


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大葬儀

駕篭 真太郎
太田出版 F×COMICS ¥1,234


『マンガ・エロティクス』『マンガ・エロティクスF』に掲載された短編9編が集められています。
こう書くとどうオカズにしようかなあとか俺の好みのシチュエーションかなあとか色々考えてしまう人もいるでしょうけど落ち着いて下さい。もう1回タイトルをよく読んで。これでどうこうできる人は少数だと思います。
この短編集のタイトルにもなっている「大葬儀」ですがとにかく笑いました。
この人の作品すべてに言えることですが、ストーリーというか設定がやたらと細かいんです。
以下、大葬儀より引用です。

「あなた、未亡人荒らしね!!」
「死体のふりして死姦マニアに犯される被死姦マニア!!」
「北海道は苫小牧から空輸した新鮮な未亡人!!」

どうですか。どんどん読みたくなってきたんじゃないですか?
画風は淡白めですが内容はかなりグロいものもあります。のでそういうのが苦手な人や、不謹慎ネタには憤りを感じる方にはお薦めできませんが。ブラックな笑いどんとこい!なあなたにはかなりお薦めです。

ちなみに私は「大葬儀」も好きですが「西川ちえりと愉快な仲間」が好きです。
ちょっと内容が内容なのでここでは深くふれません。
さらっと言えば江戸川乱歩の『芋虫』テイストです。

駕篭 真太郎オフィシャルサイト『インドで乱数』

(文責:デスク 03.3.16)


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必殺山本るりこ

唐沢なをき
竹書房 ¥660


基本的には、バレー部(とかいろいろな部活動)で無茶な状況で無茶な特訓をやって無茶な対決をやって勝利を収めるというかなんというか、というワンパターンギャグマンガ。単行本で一気に読むとなんだか軽い目眩を感じる程。なんというか、まるで世の中の役に立たない。まさに唐沢なをきの真骨頂。大好きです。
出てきた部活動を裏表紙から引用すると、
演劇部・ミジンコクラブ・バレー部・水泳部・雪合戦部・女相撲部・節分部・ひなまつり部・運動会部・クリ拾い部・SMクラブ・スカトロ部・漫画研究同好会・お花見部・宇宙バレー部
もう一つの見どころ、柏木さんの最後の姿を何点か引用します。
「あああッ柏木さんがひき肉にっ」
「雪玉の中に石がっ」
「あ あ あ あっ 柏木さんが穴だらけにっ」
「コーチっ柏木さんが電線にからまって黒こげにっ」
「柏木さんが(また)ひき肉にっ」
「ああっ吸血ウナギが柏木さんの体にタマゴを産みつけているっ」
「…ああっ柏木さんが宇宙のチリにっ」
いやいや。いいですなあ。

唐沢なをきオフィシャルサイト「からまん」


(文責:デスク 03.7.9)





ひとりで生きるモン!

西 炯子
徳間書店 ¥657


 小学館パレット文庫のしおりに連載中の4コマがコミック化。
 しおりってあたりでもういかがなものかと思ったのですが、あの繊細ななめまわしたくなる少年を描く西炯子先生がギャグマンガ。買わずにはおれませんでした。近所のしけった本屋には当然おいてないので、Amazonで取り寄せましたとも。
 そして、
「私は思う。
私がいなきゃダメな男は
私がいたってダメ−−−!」(本編より)
 そう!そうなんですよ! ああっこんなことを声を大にして語ってくれるマンガがあるなんて!
 元々ファンでしたが、これを機にイラスト集まで買いましたとも。いわゆる不条理系とはまた違う、地に足のついたエキセントリックさが絶妙です。
(文責:委員長)


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バスルーム寓話

おかざき真理
飛鳥新社 ¥952


 おとなりの「お兄ちゃん」は7年前に東京へ行った。夏休みのある日、その彼から手紙をもらったという女性が三人、次々とやってくる。彼が不在の家で、彼女たちはそれぞれの彼との思い出を語りだすのだが、そこから徐々にうかびあがってくる彼の姿とは・・・。(収録作品:1996年の夏休み)
 ファンロードという雑誌に載ってた頃から好きでした。繊細なタッチ、不思議な雰囲気のお話。プロデビューしてからの作品を読むのは、実をいうとこれがはじめてです。だって、万が一ふつーのラブコメ漫画家になってたらイヤなんですもん。
 で、おすすめするのはこの、デビュー作がおさめられているこの一冊。不可思議な、ありえない出来事が展開しつつ、リアリティがあります。こういうのを、まさにファンタジー、というのかもしれません。

おかざき真理オフィシャルサイト

(文責:委員長 03.06.25)


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マウス・マウスII 〜アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

アート・スピーゲルマン
晶文社 全2巻


マンガでは初めてピュリッツアー特別賞を受賞した作品。
ユダヤ人をネズミ、ポーランド人をブタ、ドイツ人をネコで表現している。
息子のマンガ家がアウシュヴィッツを生き延びた父親と交わしたインタビューを基に、過去と現在を巧妙に行き来しつつ綴っている。
このマンガが深みを持っているのは、このストーリーに出てくるキャラクターの過去だ。
父親がアウシュヴィッツに収容されるまでで1巻を費やし、妻以前の女性とのトラブルまで描いてあるのだ!!


さらに、この父親(ヴラデック)は、単純に苦難を乗り越えたヒーローとして描かれていない。

「あの人、人間より物のほうが大事なのよ!」(後妻のマーラ)

「父さんは自分がどんなに器用か見せたくてしょうがなかった……それでぼくのやることはみんなダメってことになるんだ。ぼくはおかげで修理仕事じゃノイローゼになったものさ」(息子のアーティ)

「ヒッチハイカーだと?おい!ありゃ黒人じゃないか!早く車を出せ!」
「わしはずっと黒人野郎が後ろの席から食べ物を盗まないように見てたんだぞ!」(ヴラデック)

戦争を基本としたストーリーにヒーローがいない、ということがこれほどまでに読後感を悪くするのか。
いや、戦争物と書いてお涙頂戴とよむものばかりに接しすぎていたからだろう。このやるせなさは、正しい。

(文責:デスク)


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ヨリが跳ぶ

ヒラマツ・ミノル
講談社 モーニングKC 全20巻


ギャグとシリアスの交ぜ具合が絶妙なVリーグ女子バレーボール漫画。
迫力満点の絵。アングル。スパイクひとつ取ってもすげえです。
そして読者をグイグイ引っ張っていくストーリー展開。
主人公も周囲もほぼ女性(当たり前)ですが、カラッとしたキャラクターばっかりなのもポイント高い。
才能を妬んで陰険に策謀を巡らせるようなありがち設定ナッシング。てか正面きって喧嘩だし(しかもグーで)。
そしてラストへ向かって高まるテンション!! 限界の向こうに見えたものは……!?

アツい。アツすぎる。
個人的にはチーホノワの引退宣言あたりがツボです。

(文責:デスク)


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ラクダが笑う

寺田克也
ワニマガジン社 全1巻


男が好きでオカマが好きで女でも別に良くって要するに穴がありゃいいチンポと暴力で全てを解決するチンピラ・ラクダのエロバイオレンスアクション。
この人は特に絵が上手です。バーチャファイター2のキャラクターデザインやった人ですが、全体に退廃的な雰囲気で、それがまた。ベタの使い方とか、背景の小物とか。

漫画好きなら読んでおいた方がいいかと。

寺田克也オフィシャルサイト

(文責:デスク)


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