本レビュー 〜雑学・エッセイ〜

一見したところでは無駄に思える雑学でも、他の人には有用かもしれない、
そんなスタンスで紹介しております。
なので、「あっ、しまった買うんじゃなかった!」
なんてのも紹介しております。
悔しいから。(委員長)





≪あ行≫
悪の対話術 福田 和也  講談社現代新書¥700

生きる読書 群 ようこ  角川Oneテーマ21¥571

囲碁の世界 中山 典之 岩波新書

大槻ケンヂのお蔵出し 大槻 ケンヂ  角川文庫¥667

≪か行≫
温泉教授の温泉ゼミナール 松田 忠徳  光文社新書¥680

カルト王 唐沢 俊一  幻冬舎文庫¥571

漢字と日本人 高島 俊男  文春新書¥720

共感覚者の驚くべき日常 リチャード・E・シトーウィック  草思社¥1900

紅茶を注文する方法  土屋 賢二  文藝春秋 ¥1238

≪さ行≫
14歳からの哲学 考える教科書 池田晶子 トランスビュー¥1200

食と文化の謎 マーヴィン・ハリス 岩波書店¥1100

それいぬ 正しい乙女になるために  嶽本 野ばら  文春文庫PLUS ¥505

≪た行≫
試すな危険! 冒険野郎ハンドブック 人喰いザメの生け捕りから時限爆弾の解除まで
ハンター・S・フルガム 早川書房 ¥1200

ダーリンの頭ン中 英語と語学 小栗 左多里&トニー・ラズロ メディアファクトリー¥998

「超」文章法 野口 悠紀雄 中公新書 ¥780


≪は行≫
春信の春、江戸の春 早川 聞多 文芸新書 ¥800

ファンタジーの世界 佐藤 さとる 講談社現代新書書 ¥(絶版)

べんのお便り べん(辛+リ+辛)野 善己 幻冬舎 ¥1260

≪ま行≫
まれに見るバカ  勢古浩爾  洋泉社\720

もてない男−恋愛論を超えて  小谷野 敦  ちくま新書¥660

≪や行≫
ヨーロッパ お菓子漫遊記 吉田菊次郎 時事通信社¥1553


悪の対話術
福田 和也 著
講談社現代新書 ¥700

 上手な会話とは、野球や政治、宗教はタブー。品のないゴシップも当然避ける。となれば自然と話題は芸術関係など高尚なものに限られる。
 だけど世の中、高尚な話ばっかりじゃやっていけませんよね。多少は泥臭かったり生臭かったりする話題も、ある時は使い、ある時はさらりと身をかわし。毒のある会話も楽しめる大人になりたいものです。
 そこで本書はこう云います。
 会話を楽しむには、教養のある人たちと友達にならなければならない。  
 だからそんなことはあったりまえなんである。自分がスキルアップしたからといって友達を急に変えようなんて真似はできないし、したくない場合だって多々あろうに、そのへんはすっぱり無視して結論がこれ。
 『悪』なんていうわりに実にまっとうなというかありきたりな内容で、読後感の空しさといったら通販で裏ビデオ買ったら雪の兼六園しか映ってなくて一縷の望みをかけて結局最後まで見てしまったときのようなああもう
 この著者、『悪の恋愛術』なんてのも出してます。Amazonではこちらがいっそう評判悪いみたいです。著者は普通に善良な人間なのでは。シリーズ化するつもりかもしれませんが、『悪』は書けない人なんですよ、きっと。
(委員長 02.07.02)

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生きる読書
群 ようこ
角川Oneテーマ21 ¥571

 誤解のないよう言っておきますと、私、群ようこ氏のエッセイは好きなんです。好きなんですが、私は同時に新書版には評論とか研究を求めてしまうんですよ。だもんで、このいかにも「あの面白い小説を書く群ようこさんが、ご自身の読書遍歴を通じて読書とは、生活とはを語る!」なんてな内容を期待させるタイトル、これでエッセイっていかがなものか。
 なんつーかデートで「今日は和食の気分だな」とかいうので「まさか懐石?」なんてついていったら吉野屋だったみたいなイヤ好きですってば、一人では入れないとかぬかす婦女子とは今後の付き合いを考え直してもいいと思うほど。だいたい牛丼食べるのに複数できゃいきゃい行く必然性があるのかと問いたい。黙ってあの牛肉と飯粒、生卵や紅生姜とのハーモニーを味わえばいいのですよ。じっくり丼と向き合い、語らうのですよ。
 えと、まあそういうわけで。
 書き下ろしが一編ありますが、半分は『本の旅人』に連載されたものです。「この月買った本」リストがあるので、これはなかなか興味深いですが。こういう寄せ集めをなんで新書版で出すかなあ。
 著者や作品がどうとか以前に、角川の商売っけを感じてしまう一冊。
(委員長)

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囲碁の世界
中山 典之
岩波新書 ¥480(絶版らしい)*現在、アンコール復刊されています。

 ヒカルの碁、人気ですね。
 ブームにそのまま乗っかるのがキライなもので、とりあえず碁の知識を仕入れておこうと手にとったうちの一冊が、たまたまこの本だったのですが。
 いや面白い。碁をまったく知らない人間にも面白いと感じさせる稀有な一冊。単純に雑学の本、エッセイとして読むのに充分耐える本です。紹介されているハート型の棋譜、実際に石を並べてみたくなりますよ。
 恐らくいまは空前の囲碁ブームでしょうに、復刻しませんかねえ。古本屋、図書館、Amazonのユーズドストアでお目にかかれます。
(委員長 02.07.02 *アンコール復刊されているのを発見した日

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温泉教授の温泉ゼミナール
松田 忠徳
光文社新書 ¥680

 日本人の大半は温泉好きとされますが、その「好き」のベクトルは様々です。
 料理が楽しみな人。洒落たホテルで友達とわいわい、が好きな人。ひなびた雰囲気を求める人。そして温泉そのものが目当ての人。
 いくら温泉が楽しみで来たといっても、サービスが悪かったり食事が不味かったりでは、二度と来ないぞと思うのは当然でしょう。だけど、温泉の良し悪しを見極めて、また来ようと思える、そう判断できるだけの知識をどれだけの日本人が持っているんでしょうか。
 湯の華をゴミと勘違いして文句をつける話はすでに、「自分は違う、ちょっとは温泉のことを知ってるんだぞ」と主張するための笑い話ですが、あの温泉独特のぬるぬるした感触、あれがお湯を入れ替えずに使いまわしているがゆえの、他人の皮脂のせいだと言えば?
 なんつって知ったかぶり書いてますが、私もこれを読んで、うへっと身震いしたくちです。すでにDNAに刻まれているかのような日本人の温泉好きは温泉への盲信を生み、本物の温泉を見失い、レプリカをありがたがるところまできているのかもしれません。
 たかだか一泊に万札を求める温泉です。そこで水道水で薄められた温泉や、プールなみに塩素を加えた温泉、何度も使いまわした温泉につかるのでは、いかにも理不尽。湯の華の話のように、客に知識がないために、本当に良い温泉が駆逐されてしまう、そんな取り返しのつかない状態になる前に、できることからはじめてみましょう。温泉にいったら、こう訊くのです。
「循環風呂ですか、源泉流しっぱなしですか」
 どちらがどう良いのかの詳細は、この本でどうぞ。
(委員長)

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大槻ケンヂのお蔵出し
大槻 ケンヂ
角川文庫 ¥667

 アリー・マイ・ラブという海外ドラマをご存知だろうか。これの中で、主人公アリーの元彼が、いまの妻とのセックスについて不満をのべる場面がある。
「特に不満があるわけじゃないんだ・・・ただ妻は、目を見ないんだよ」
 で、アリーとのときは目を見ていたのに、という話だが、正直な感想として、
 えーっ、普通目を見るかぁ?
 である。ドラマ中でも、アリーの友だちが「普通見ないわよ」と言っている。結局このドラマでは、なんでこの元彼が、目と目で見つめあうセックスにこだわっているのか、よくわからなかった。
 ところがだ。この本におさめられている大槻ケンヂとAV監督代々木忠の対談を読んで、なんか、なんとなく、わかってしまったのである。
「そうか、よし、次はじっと目を見て・・・!」
 などと呟き、きらん、と明けの明星を見上げてしまう勢いで、わかった気になってしまうのである。
『目を見ないのはおれたちの言う「カラミ」だから。「セックス」とは言わない。』(本文から、代々木監督)
 もしかしてアリー・マイ・ラブの脚本家はこれを読んだのじゃないかと(いや絶対ないと思うが)いうくらい、ほほうと納得してしまった。
 カバーが大槻氏の子どもの頃の写真という、ファン以外はどうにも買う気にならんだろうなんともあれな本だが、この対談と、実は誠実な人柄が透けて見えてしまう人生相談だけでも、読む価値はあると思う。
 余談だが、大槻氏の本の解説は、女性が書いている場合に限ってたいていつまらない。どことなく女友だちから「アタシ、彼のこういうところが好きなの」て話を延々と聞かされるのに似ている。
(委員長 3.3.20)

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カルト王
唐沢 俊一 著
幻冬舎文庫 ¥571

「どうでもいい話なんだけどさ、」
 と前置きして、
「ま、どうでもいい話なんだけどね」
 と締めくくらざるを得ない。
 雑学と一口に言っても、万人が興味を持ちそうなジャンルと、ごく一部のみが膝を乗り出す話題とがあります。本書は、まぎれもなく後者。知っていても披露する場所がない。
 それでもなにかのハズミで語りだしてしまい、その場の雰囲気の修復に苦労する羽目になる、そんな状況をすでに経験済みのかたならば、この本はお勧めするまでもなく、とうに読んでいるかもしれませんな。ところで私は筆者を、と学会のうちではもっともトンデモな分野に対して愛情深い眼差しを持ったかただと思っております。
(委員長)


全部で4つの章にわかれ、15個のコラム…ていうのか…にわかれています。
唐沢商会名義でマンガ化されているものの元ネタっぽいのもあり、マンガの中では描ききれていなかった細かい事情等も書いてあって、同じもの読まされちまった感はあまりありませんでした。
個人的には
驚異なる「死体」のディープな世界!
がブラックな文体で好きです。
(デスク)

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漢字と日本人
高島俊男 著
文春新書 ¥720

『当時の多くの日本人は、(中略)自分たちの根っこのこと――いかにまずしいものであろうと、この根っこを切りはなしてしまっては、われわれ日本人はその立つ地面をうしない、世界にただよう浮草になってしまうのだ、というようなことを考えなかったのだ』本文から
 漢字の勉強をするつもりが、歴史の勉強になってしまいました。
 日本は、自国より優れた文化をもっているからと、千数百年前には中国の文字――漢字をとりいれ、明治と戦後には英語をとりいれ、しまいには日本の文化そのものをかなぐり捨てようとしたらしいです。
 いや、今でもそういう風潮は続いていて(なにかというと「欧米では」と言いだすテレビのあの人たちとかね)日本の国民性というのは「勤勉」なんかじゃなく、「軽薄」なのじゃないかしらん、と思ってしまいます。「勤勉」は戦後の流行だったんですよ、きっと。
 漢字検定試験を受ける人は平成14年度で二百万人、五年前と比較すれば倍近い数ですが、これも「日本の文化を見直そう」というわけじゃなく、一時の流行なのでしょう。
 さあ、恋人だの妻だのに「薔薇って漢字で書ける〜?」(古っ)と言われて内心小面憎く思っているアナタ。この本を読んで知ったかぶりしましょう!
「なにいってんだよ、漢字っていうのはそもそも不完全に日本語に取り入れられた不自由な文字なんであってなあ・・・」
 完全・無視されること請け合い。
それでもこういうのが好きな(委員長)

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共感覚者の驚くべき日常 形を味わう人、色を聴く人
リチャード・E・シトーウィック 著/山下篤子 訳
草思社 ¥1900

 幼い頃、他人もまた自分と同様に、見たり聴いたり考えたりする「人間」なんだと認識しはじめた頃、見ているものが他人にも同じように見えているのか不安になったことがありませんか。私が赤いリンゴだと見ているものは、他人には黄色いレモンだったりしないかと。
 音を聞くと色が見える、匂いや味で手に物体の感触が生じる。そんな共感覚者という、耳慣れない言葉にひかれて読んでいくと、とうの昔に忘れていた疑問が浮かび上がってきました。
 私が見ているものは、それそのものではなくて、目を通して得られた刺激を脳が解釈した姿。その解釈に、私のコントロールは及びません。「私」を支配するのは私の意識ではなく、脳の中にひそむコントロールできないなにかなのかもしれない。
 ややこしいテーマですが物語仕立てで語られているので、なかなかとっつきやすい一冊。
(委員長)

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紅茶を注文する方法
土屋 賢二
文藝春秋 ¥1238

 土屋氏の著書の中でもユーモア・エッセイ(ほとんどそれだが)を続けて読むとさすがに飽きる。毎食後に一冊ずつ読んでみたのだが十年ともたずに途中で飽きた。
 こういう書きかたは良くないな。実はちっとも飽きないってことを逆説的に述べていると誤解されかねないし、そもそも日に三冊ずつ読んでいたら著書はそんなに多くないからすぐに尽きてしまう。しかし同じ本をもう一度読んだところで、きっと気付かずに最後まで読んでしまうだろう。わあ、やっぱり飽きないのかもしれない。
 しかし週刊文春で連載しているだけに、笑かしのパターンは見えてくる。ちょうど「美味しんぼ」が人助け編だの対決編だのに分類できるように。私は、独自の研究分野として、土屋氏がこれまでに発表してきたユーモア・エッセイの全てを分析・吟味し、そのパターンを完璧に分類し、とうとう書き出しの一行を読んだだけでオチまで推測できるようになった、という人がいれば物陰から眺めてみたいと時々思う。
(委員長)

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14歳からの哲学 考える教科書
池田 晶子
トランスビュー  ¥1200

「どうして人を殺してはいけないのか」と子どもに問われたとき、大人は「そんなことは自分で考えろ」とつっぱねるべきだった。
 それができなかったのは、問いそのものに唖然としたなんてのは言い訳で、大人自身、考えたことがなかったからだ。考えたことがあれば、その答えは雑誌で特集をくんで得られるものではなく、ただその人自身が考えるしかないのだと知っていたはずだ。
「なぜ殺してはいけないのか」
「なぜ生きなければならないのか」
「なぜ幸せにならなければならないのか」
「なぜ自殺してはいけないのか」
 その答えには、それぞれが考えることでしかたどりつけない。
 この本には、答えは明示されていない。ただ「考えてみよう」と手招きし、その道筋をちょっと整えてくれているだけだ。
 そもそも「なぜ考えなければならないのか」という問いについて著者は、「本当のことが知りたくはないか」「本当のことを知らずに生きるのはつまらなくないか」と誘っている。わたしはこれに、もう少し誘い文句を付け加えたい。この本にしめされた問いはみな、考えるのに骨の折れるものばかりだから。
 苦しい思いをして、眉間にしわを刻んで考えても、あるいはなにも考えなくても、あなたをとりまく環境はちっとも変わらないだろう。それはあたかも、高い山のてっぺんに、ヘリコプターで行った人と、ふもとからえっちらおっちら登っていった人とでは、目にする景色は結局一緒だというのに似ている。
 いや、その二人が見ている景色はそれぞれ違うはずだ、と思うなら、自分の足で登っていった人の見る景色を、あなたも見たいと思うなら、この本はあなたにとって有益な教科書になりうるだろう。少なくとも、よくわかんないけど語り口調で読みやすいね、という感想だけで、あとはきれいさっぱり忘れてしまう、ということにはならないはずだ。
 誤解を恐れずに言うなら、わたしはこの本に書かれていることはほとんどすべて、小学生の頃にはもう考えはじめていた。本文中にあるように、「悩むのではなく考える」ことをしなければ、考えて道を見付けださなくては、とても生きてはいけない環境にたまたまいたせいだ。そのような境遇にあり、いま大人である人は、だからこの本を、古いアルバムでもめくるように読むことができるだろう。
 大人こそ読むべき、という書評があったが、いままで考えずにすんできて、もう一日の半分を仕事についやさなければならない大人たちには、この本はもう荷が勝ちすぎるように思う。それほどこの本が提示する問いは、大多数の人にはあまりにもあたりまえで、疑うことなど思いもしなかった事柄ばかりだからだ。社会の構成員となってから、あえてこの問いとがっぷり四つに組むのは、そうとうな気力が必要だろう。
 そう、だから、14歳から、などと題しているが、子どもは大人が考えているより三年早く成長するという、11歳、小学生から読むことを、わたしは勧めたい。

(委員長 03.08.13)

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食と文化の謎
マーヴィン・ハリス 著/板橋作美 訳
岩波書店 ¥1100

 第6章『ミルク・ゴクゴク派と飲むとゴロゴロ派』は、原因不明の便秘と下痢に苦しんでいる人は、読むといいかも。
 といっても健康本ではなくて、タイトルどおり食と文化の関連について述べた大真面目な本なのです。
 牛乳といえば、ちょっと前に「牛乳は他の動物のたんぱく質なのだから大量に飲むのはよくない」なんて頓狂なことを言った人がいましたね。牛乳飲め飲め宣伝に反発したんでしょうが、それじゃあ人間の肉を食うのが一番なのかい、という話になるわけで。
 人肉を食べると病気になるとか聞きますが、この本によれば、どうも新鮮なうちに食べれば問題ないようです。
 異端の人類学者と呼ばれるハリスさんは問います。たいていの動物は食べるために殺す。人間は人間を殺すけど、食用目的ではない。どうしてだろうねえ。
 ほんと、どうしてなんでしょうねえ。その問いに、この本では答えを出していませんが。興味深い問いであることは間違いないです。異端と呼ばれるだけあって、内容を鵜呑みにはできなさ加減がスリリングだと思います。
(委員長)

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それいぬ 正しい乙女になるために
嶽本 野ばら
文春文庫PLUS ¥505

 否定形はもちろん、「ノン!」。野ばらさんとはゴシックロリータ少女たちの・・・なんなんでしょう、カリスマ? 教祖? 伝道者? 乙女は意地が悪いもの、だの、制服はおもいきりダサく着こなすのが乙女だの・・・うーん、−−大好きです。独特の美意識というにはあまりにも、誰しも未熟な頃に一度は抱いた誇りや奢り、他の誰でもない自分であろうとした気負いなどがそこには散りばめられているようで、懐かしいような、いとおしいような気持ちになります。
 これは初期のエッセイ集、読むと、野ばらさんを彼女にしたくなりますよ、きっと。
 ・・・や、ていうか男性なんですがね。
(委員長 03.06.25)

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試すな危険! 冒険野郎ハンドブック
人喰いザメの生け捕りから時限爆弾の解除まで

ハンター・S・フルガム
早川書房 ¥1200

ロマンあふれる24の究極任務を微に入り細を穿って解説しているマニュアル(?)本。・必要なもの・所要時間・予備知識・実行の手順と4段階で解説してくれる。どの位細かいかというと、
・「マヤ文明の黄金を手に入れろ」の必要なものリストに虫除けがあったり
・「樽に入ってナイアガラを下る」の実行の手順5が『命あることを祝う』だったり
・祝ったあとは『おとなしく当局に連行される』だったり
・「バッキンガム宮殿の寝室に忍び込む」の目的がチャールズ皇太子のベッドメイキングだったり
まさに至れり尽せり。その徹底した姿勢には頭が下がります。
その淡白な語り口から逆にニヤリとさせられる所が随所にあり、一見役に立たないマニュアル本好き(私の事ですが)には堪らない一品です。
(デスク 03.08.15)

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ダーリンの頭ン中 英語と語学
小栗左多里&トニー・ラズロ
メディアファクトリー ¥998

作者名は「トニー・ラズロ&小栗左多里」じゃなくていいのか?
語学オタクの夫の熱い主張を漫画家の妻が綴る、雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されたもの。母音の前の「The」は「ザ」か「ジ」か? こだわれば深く熱い英語と語学に関するエッセイ。  (係長)

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「超」文章法
野口 悠紀雄
中公新書 ¥780

 どうも野口氏は、本当は小説向けの文章読本も書いてみたいんじゃなかろうか。そんな気配がそこかしこから立ち上ってきて、なんだか微笑ましくなってしまいます。
 しかしこの本が対象としているのは『論文、課題論文、解説文、報告文、企画書、評論、批評、エッセイ、紀行文』。氏の文章を書く時の思考法がわかって楽しいです。
『「超」勉強法』もそうですが、数あるハウツーものの中では「精神論に陥らない」「比較的実行しやすい」という点で、読まず嫌いするには惜しい一冊ですよ。
(委員長)

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春信の春、江戸の春
早川 聞多
文芸新書 ¥800

 江戸時代のエロ事情を考えるとき、春画を抜きにはできませんね。なんでそんなこと考えるんだと訊かれたら困るけど。
 第一章、第二章は退屈なので、本題である第三章以下を先に読んでから、立ち返って読むことをお勧めします。
 しかし色々高尚な匂いのすることを書き連ねても、ようするに江戸時代の「おかず」じゃねーかと。や、まあそれでいいんじゃないでしょうか。でもそれだけじゃないんだよ、こういう奥深さもあるんだよ、というのが一歩進んだ楽しみなのであって。
 エロと知的楽しみは両立するという一冊。
(委員長)

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ファンタジーの世界
佐藤 さとる
講談社現代新書 ¥(絶版のようです。図書館等でどうぞ)

 コロボックル物語、『だれも知らない小さな国』の作者によるファンタジー論。一連のコロボックルのお話を読まれたことのない方でも、これからファンタジーを書こうと考えている人にはおすすめの一冊でしょう。
 前半では作者の、『だれも知らない小さな国』を足かけ五年、何度も何度も書きなおして仕上げた経緯が語られます。いやになって投げ出したり、話が思わぬ方向に行ってしまってどうにもまとまらなくなったりと、自分でもお話を書こうとしたことのある人なら一度は経験したことがあるでしょう。
 そこを抜け出して、一冊書き上げる人と、そのままになってしまう人。この本は、どちらのタイプにとっても、良いガイドラインをしめしてくれています。もっとも、やはり重要なのはどれだけファンタジーに夢中になれるか、という能力なのだなあとも改めて気づかされますが。
(委員長 03.06.25)

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べんのお便り
べん野 義己
幻冬舎 ¥1260

自己紹介が『「べん」の研究をしてます、べんのです』<素敵。
 今から約35年前、一本の論文に出会って以来「べん」の魅力にとりつかれてしまった著者が、愛を込めて語ります。
 「べん」と向き合うべく、スーパーサイズミー(2004年アカデミー賞ノミネート作品)よりもさらに過酷な「40日間、肉のみを食べて出た「べん」を調べる」という実験を自らの身体でやっちゃったり、短命県のひとの「べん」を10年かけて集めるプロジェクトや、100万人の「べん」収集計画をまじめに立ち上げたり。
 かたい話ばかりでなく、快便レシピを紹介していたりして、読むほどに理想の「べん」に会ってみたい思いにとりつかれることでしょう。自分の身体でかんたんに人体実験ができますし。
「べん」への愛情あふれる内容に、ウマカケバクミコさんのイラストの可愛さも手伝って、サクサク読めます。一家に一冊ぜひどうぞ。
(係長 05.04.06)

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まれに見るバカ
勢古 浩爾
洋泉社 ¥720

 本書はバカへの対処を教えて・・・くれません。まえがきでちゃぁんと、なんの役にも立たないとことわっています。《バカ》の定義をせずにバカを語ってしまうし、バカ言葉に「マジっすか」をあげておきながらナイナイの『矢部君がいうのは許してあげたい。』などとおっしゃる。
 いわば頑固オヤジの小言ですね。時に含蓄のあることを言い、時に無茶を言ってこちらをニヤニヤさせてくれます。私はこういうの大好きなんですが。
 あなたがもし、周りにいる《バカ》に腹を立て、無駄に心の平安を乱しているなら、これを読むと「まあしょうがないなあ」という気分になれますよ。多分。
(委員長)

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もてない男−恋愛論を超えて
小谷野 敦
ちくま新書 ¥660

『Air』というエロゲをご存知ですか。泣けるエロゲとして『KANON』と並び賞されるパソコンゲームです。いまだにCD−ROMのきゅぃぃん・・という音だけで涙ぐみそうになります。
 とはいえ、ん?と思う点もなくはないわけで、そのひとつが、処女への強烈な固執。そんなわけないだろうというキャラまで実は処女だったなんて設定。じゃあ主人公の男はどうなのかというと、「もう充分だろう」なんていうタイミングからして鉄板で童貞だと推測しますが、確定できる描写はありません。
 未経験、という点で処女も童貞も同じラインに立っているはずですが、実際はそうじゃありませんよね。歓迎のされ方が違います。
 いったいどうして? 童貞は恥ずかしいことなのか? そもそもセックスってそんなにスバラシイのか? 恋愛してなきゃ人間じゃないのか?
 恋人ができないと悩んでいる男性に限らず、女性にも、この本をお勧めします。もてるためのハウツー本ではないけれど、恋愛ってものを半歩離れて眺めてみるきっかけにはなるでしょう。
(委員長)

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ヨーロッパお菓子漫遊記
吉田 菊次郎
時事新報社 ¥1631


ヨーロッパで修行した吉田さんが、ウィーン、チューリッヒ、パリ、ロンドン等々をめぐるスゥィーツ・ツアーの引率をしたときの模様を書いています。ツアー2回分の中身でも店のガイド(店の外観写真、住所、連絡先)もあり充実、現地に行きたくなること間違いなし。ツアーに参加した製菓会社の社長さんのコメントや、現地の知人の話、店舗設計についての話もあり、そのへんの奥様が書いた「おいしくて楽しかったワ」というよくあるエッセイとはちょっと違います。著者の顔をどっかで見たことあるな、と思ったらでっかいお菓子屋さんの代表取締役社長でした。作るだけ、食べるだけの人じゃないからこういう本が書けたのね。(係長)

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